サラマンダー(英)/サラマンドラ(ラテン)
Salamander(英)/Salamandra(ラテン)

 一般にトカゲの姿でされる、火の中に棲む生物。ギリシア語で「火トカゲ」の意。
有尾目(イモリ、サンショウウオ)の英名でもあり、正しくはトカゲのような爬虫類ではなく、両生類となります。
また時代地域により様々な姿のサラマンダーが伝えられており、そのイメージは一定しませんでした。
後にパラケルススにおいて、錬金術における四大精霊の内の火の象徴とされます。

 古くは「火に入れるとすぐに溶けてしまう極めて冷たい生物」(※)とされていたのですが、火にくべたの中から冬眠していたイモリが這い出してきたり、あるいは伝承に登場する類似した生物との混同などにより、サラマンダーは次第に「火に棲み、火を食べ、火に強い生物」とされるようになっていきました。


両生類は暑い場所では体温を下げるために体液を分泌し、それにより水分がなくなると干からびて死んでしまうことによるもの。

 火に強いサラマンダーからは、その特性を利用した火に強い布(火浣布)が作られます。
 1つはプレスター・ジョン(Prester John:12世紀のインドあたりを治めたとされる架空の王)の手紙にある絹で、これはサラマンダーという名の虫が出すを紡ぐことによって作られます。
 もう1つは中国にいるという火の中に棲む大ネズミの毛を使った毛織物で、マルコ・ポーロによって伝えられたとされます(実際にはマルコ・ポーロは中国に行っていないとのこと)。
この大ネズミの毛織物は日本では「火鼠の皮衣」と呼ばれ、『竹取物語(かぐや姫)』の中で登場します。
 火ネズミがサラマンダーというと日本では違和感がありますが、西欧諸国ではこれらはしばしば同一視されます。

 なおこの火浣布は実際に存在し流通していたものですが、これは石綿(アスベスト)をそうと偽っていたものです。

 錬金術において四大精霊と定められたこのサラマンダーですが、創作作品では火の精霊がサラマンダーからイフリートに置き換えられている例がしばしば見られます。
「火に強いというだけで火を司るわけではない」「そもそも存在自体が神秘性に欠ける」「イフリートの方が炎の精霊として相応しい」などのイメージからなのでしょうか。
逆にただのモンスターとして登場する例は、他の四大精霊より遥かに多くなっています。