アゾット剣
Azoth

 中世の錬金術師パラケルススが所有していた剣。
軍医時代に所有していたもので、柄頭の宝石に「AZOTH.」と刻まれていたことが名前の由来。
この宝石の中には1匹の悪魔が封じられており、パラケルススは気に入らない相手にそれをけしかけたと言われています。そのためか、「剣の形をした杖(Wand)」とも。
またアゾット剣は短剣であると言われますが、肖像画を見る限りでは100cm強の細身の直刃長剣のようです。
なお柄の中には賢者の石が入っており、万能薬として治療に用いたとされています。

 アゾットというのは錬金術の3要素である水銀(精神)、硫黄(魂)、塩(肉体)の合成物で、今日では水銀(科学的な)を詩的に表現する際の言葉として用いられたりします。
それは「神聖な炎のような水」「星の光」「宇宙の水銀」(※)あるいは「万能薬」「万能溶剤」「電気」「磁気」などと考えられ、賢者の石の別名とも。

宇宙を取り巻いている川を流れている炎のような水で、これが太陽の炎などとして流れ込むとされます。
なのでこれら3つの語は表現こそ違えど、全て同じものを表します。

 Azothはアルファベットの最初の文字である「A」、ラテン語の最後の文字である「Z」、ギリシア語の最後の文字である「Omega」、ヘブライ語の最後の文字「Tau」を組み合わせた文字であると解釈されており、「あらゆるものの始まりであり終わりである」という意味になります。
しかしどうもアラビア語で水銀を意味する「Azzauq」が転訛したのが先で、解釈が後付けというのが本当のところのように思われます。