ベルフェゴール
Belphegor(英)/Beelphegor(英)

 アッシリア(モアブ人)の女神。
死海の北端東側、西にカナン、南にモアブを臨む場所に位置するペオル山(Peor)の神で、本来の名は「ペオル山の主神」を意味する「バアル・ペオル(Baal Peor)」。
ギリシア神話生殖神「プリアポス(Priapus)」と同一視され、そのため男根像崇拝されました。
愛と知恵を司る発明の女神で、今日ではパリの守護悪魔として奉られます。

 後にキリスト教によって、ベルフェゴールは7つの大罪の1つ「怠惰(Sloth)」を司る堕天使(魔神)にされます。
元は発明を司る権天使で、車椅子便器に座り、ねじれた2本の角と鋭い爪、牛の尾にあごヒゲを持った男神の姿で描かれます。
この描写はフランスの作家コラン・ド・プランシー(Jacques Auguste Simon Collin de Plancy)著の『地獄の辞典』が初出で、便器は「モアブ人らは便器や排泄物奉納していた」という学者の説が元になっているようです。
なお排泄物は、「財産」の意味を持っていたと言われます。

 ある時地獄で「幸福な結婚生活は存在するか」という議論が起こり、これに唯一「存在しない」と答えたベルフェゴールは調査役として地上へ派遣されます。
やがていくつもの夫婦を観察して回ったベルフェゴールは、「人間は互いに調和できるようにはできていない」という答えを持って地獄へ帰還します。
これは「人間は、神が造った"不完全な欠陥品"である」という、悪魔らしい見解を著しています。

 その他には、24,000人が疫病で命を失った旧約聖書の「ペオルの事件」があります。
ですがこれは自分の民(イスラエル人)がバアル・ペオルの民と食事を共にしたことに怒ったヤハウェ(YHWH)が引き起こしたもので、バアル・ペオルによるものではありません。
内容こそバアル・ペオル(の民)の誘惑を揶揄するものになっていますが、私たちの視点で見ればヤハウェの行為こそが大人気ないと思うのが一般的ではないでしょうか。