エクスカリバー
Excalibur(英)

 『アーサー王伝説』(※架空)に登場する、湖の精(Lady of The Lake)より貸し与えられた剣。
王権を得る際に岩から引き抜いた剣が戦いの中で折れてしまった際に託されたもので、アーサー王の死後に湖に返却されたとされます。
よく、この岩から引き抜いた方がエクスカリバーだと思われていますが、これは半分正解で、半分間違っています。
物語の変遷も含め、その辺りの説明を行っていきます。

 『アーサー王伝説』の起源はイギリスのウェールズにあり、当時はCaledv(/f)wlch(カレドヴルフ)、Caledwich(カレドウィヒ)などと表記されていました。
Caletが「誓い」で、Bwlchが「V字の刻み目」を意味します。
日本語訳では、「硬い切っ先」とされています。

 12世紀、各地にあった様々な伝承や資料をジェフリーという人物が編纂します。
現在ある『アーサー王伝説』はこれが基本となっています。
ちなみに「岩から引き抜かれた剣」というのは、この際に北欧神話の「樹から引き抜いた剣」から引用されています。
 彼の書はラテン語で標記されていたこともあって、ラテン語で鋼鉄を意味するChalybs(カリュブス)からCaliburnus(カリブルヌス)と名づけられました。
当時鉄を支配する者は覇権を手にすることと同義であり、「鉄鉱石から剣を生み出す」→「岩から剣を引き抜く」者が王権を手にするとかけた逸話です。

 このカリブルヌスがフランスに渡った際、フランス語風にCalibour(カリブール)と訳されました。
それが人の手によって書写が行われるにつれ、「そして」という意味の接続詞Etが誤って語頭についてしまい、さらに変化を遂げEscalibor(エスカリボー)となりました。
Esそのものには何の意味もありません。

 このエスカリボーがイギリスに逆輸入された際に、イギリスではEsという語がないのでExで代用され、Excalibor(エクスカリボー)となります。
Exというのは「〜から出た」という意味で、「カリボーという剣から新たに生まれた剣」という解釈が為されます。
それまでの『アーサー王伝説』では剣は1本だったのですが、ここで前述した2本となります
つまり、「岩から引き抜いた1本目の剣(カリボー)が失われたために、新たに登場した剣」ということになります。
このExcaliborがExcaliburとなり、現在に至ります。

 現在岩から引き抜いた1本目の剣は、2本目の剣との混同視を除けば無銘となっています。
ですがこれらのことから考慮すれば、そちらはカリブルヌスで、湖の精から貸与された2本目の剣がエクスカリバーと考えるのが妥当です。

 ちなみに、エクスカリバーの外観は定まっていません。
元々が架空のお話なので当然といえば当然ですが、基本の両刃の長剣から、片刃の剣とするものなど様々です。